気候適応×レジリエンス設計基準

欧州科学気候諮問委員会が、気候適応について興味深い勧告を出しています。
EUの適応計画に共通の参照シナリオを設け、2100年に世界平均気温が産業革命前比2.8〜3.3℃上昇する経路と整合する気候リスクに備える、というものです。
これは、1.5℃目標を諦めるという話ではありません。排出削減で「目指す世界」と、インフラや事業を守るために「備える世界」を、分けて考えるということだと私は理解しています。
もう一つ重要なのが、「climate resilience by design」という考え方です。気候リスクが顕在化してから設備を追加したり、拠点を改修したりするのではなく、政策、事業、建物、インフラ、投資の設計段階から、将来の気候条件を織り込む。気候適応を、事後的な防災対策ではなく、設計原則として扱おうとしているわけです。
欧州委員会は、こうした議論も踏まえた新しい気候レジリエンス・リスク管理枠組みを、2026年後半に採択する予定です。現時点では勧告段階ですが、適応を投資判断に組み込む方向性は明確になってきています。
足元では、WMOが2026年夏から秋にかけて、強いエルニーニョへ発達する見通しを示しています。個別のエルニーニョと長期的な温暖化は同じ話ではありませんが、気候の振れ幅を前提にする必要性を、改めて意識させられます。
気候適応は、「起きた被害にどう対応するか」だけではない。設備、拠点、サプライチェーンへの投資が、どの気候条件を前提に設計されているか。その前提を確認することが、企業や社会インフラの存続可能性を考える出発点になりそうです。
【参考情報】
・European Scientific Advisory Board on Climate Change
https://climate-advisory-board.europa.eu/news/escalating-climate-impacts-demand-urgent-coordinated-adaptation-across-the-eu
・European Commission(European Climate Resilience and Risk Management Framework)
https://lnkd.in/g_v9a4Kc
・World Meteorological Organization(Global Seasonal Climate Update)
https://wmo.int/media/news/wmo-likelihood-increases-of-el-nino