フイリマングース根絶確率の修正

環境省が8月7日に、奄美大島のフイリマングースについて、2024年9月の「根絶」宣言の根拠になった根絶確率の数値を訂正する、というお知らせをだしました。2023年時点の推定で、エリアベースのモデル(HBM)が99.7%から99.9%へ。個体ベースのモデル(REA)が98.9%から99.4%へ。研究者による再検証を反映したもので、どちらも上方修正です。環境省は「今回の修正により根絶宣言の内容が変わるものではありません」としています。
そもそも根絶が確率で判断されている、という構造を知りました。
2024年の宣言文には、こう書かれています。
「一般に、ある生物種がその地域から完全にいなくなったことを確実に確認することは非常に困難であり、捕獲数がゼロになったことをもって根絶できた、という判断はできません」
最後の1頭が捕獲されたのは2018年4月。そこから約6年、わな、探索犬、自動撮影カメラのいずれでも、明らかな生息情報は確認されていません。それでも「ゼロだからいない」とは言えないので、2つの異なる統計モデルで根絶確率を推定し、その数字を検討会にかけて判断した。宣言は、観測だけで決まるのではなく、推定と合意を経た判断です。
そして今回のお知らせには、こうも書かれています。
「これまでに修正前の根絶確率が使われている資料についても極力修正しますが、すでに修正が困難なものは修正前の根絶確率をそのまま使用する場合があります」
一度出た数字は、全部は直せない。それを行政が自分で書いている。
自然の情報を意思決定に接続する仕事をしていると、この3つが並んで見えてきます。いなくなったことを確実に確認するのは難しいので、推定するしかない。推定は後から動く。動いた数字は完全には回収できない。
これは、企業が自然について目標を立てて「達成した」と言うときの話でもあると思っています。
7月にTNFDが出した侵略的外来種の指標に関する討議文書は、外来種がもたらす結果を個々の組織に容易に帰属させることはできない、という認識から出発して、コア指標を生態系の「成果」ではなく企業が管理できる「行動」に置くことを提案していました。帰属できない成果をどう扱うか、という同じ壁の前に立っていたのだと思います。
奄美の事例では、その壁に確率という方法で向き合っています。モデルをつくり、検討会で合意し、宣言した。そのうえで、数字が動いたら訂正を出している。
自然を測るというのは、正しい数字を一度出すことではなく、動く数字を扱い続けることなのかもしれません。
そして、自然という変化するものを相手にする以上、必要なのは、最初から完璧な数字を持つことよりも、新しい情報が入れば判断を更新し、それに合わせて行動も変えていけるマネジメントなのだと思います。
難しいのは確かです。でも、その不確実性をなくそうとするのではなく、不確実性があることを前提に適応し続ける。そこに、自然を経営や社会の意思決定に組み込んでいく難しさと、チャレンジの両方があるように感じました。
🔗 根絶確率の修正について(環境省 沖縄奄美自然環境事務所・2026年8月7日)
https://kyushu.env.go.jp/okinawa/press_00155.html
🔗 根絶の宣言と、その判断の根拠(環境省・2024年9月3日)
https://www.env.go.jp/press/press_03661.html