金融×参照基盤

2026-08-18

金融×参照基盤 図版1

金融庁が7月17日に、風水害に関して2件の資料を出しています。ひとつは17の金融機への調査「風水害リスクに関する金融機関の取組の動向や課題」、もうひとつは分析事例集「FSA Analytical Notes(2026.7)vol.1」に載った「地域銀行の住宅ローンにおける気候関連リスク分析の試行」です。

分析事例集は、地方銀行と第二地方銀行の貸出明細から住宅ローン債権を抜き出し、国土交通省の洪水浸水想定区域データと重ねたものです。抽出された債権は、2025年9月時点で残高ベースで国内の住宅ローンの5割強に相当します。

結果を見ると、業態間では傾向に差は見られません。一方、個別の銀行ごとには差異が見られ、営業地域が重複する銀行どうしでは似た傾向が確認されました。報告書は「銀行が基盤とする営業地域の特性による影響が大きいことが示唆された」と書かれています。

もう1本の調査には、シナリオ分析の課題が4つ並んでいます。風災、本社以外の主要拠点、サプライチェーン、複合災害です。

水災のほうは、治水経済調査マニュアルなど公的な手引きなど官公庁の公表文書等で分析手法や評価に参照できる枠組みが整ってきている一方で、風災については、「データが不足していることに加え、参照可能な手法や枠組みが見受けられないことから、分析手法の構築が難しい」との声が聞かれた、とあります。

ただ、必要に応じて外部ベンダーのモデル等を活用しながら、風災も含めた分析を行っている事例もみられる、と書かれています。そうした金融機関からは、水災による影響が相対的に大きい一方で、物件の立地や構造、たとえば高層階にある物件などによっては、風災の影響が水災を上回るケースも確認される、という意見があり、風災と水災のいずれか一方に着目するのではなく、多面的な分析が重要だ、としています。

参照基盤の整い方と、影響の大きさは、必ずしも一致しない。そしてそのズレは、外部モデルも使って多面的に分析した事例のなかで、具体的に確認されていました。

そのうえで資料は、先の4つの論点について、現在、金融機関が実施しているシナリオ分析の結果よりも大きな財務影響が生じ得ることを示唆している、と書いています。

自然や気候の制約を経営判断に載せるとき、制約の大きさに加えて、それを測る共通の基盤がどこまで用意されているかが効いてくるのかもしれません。環境情報化というのは、その基盤を、まだ整っていない側へ広げていく話でもあるのかな、と思っています。

🔗 金融庁「風水害リスクに関する金融機関の取組の動向や課題」(2026年7月17日)
https://www.fsa.go.jp/news/r8/sonota/20260717/20260717.html

🔗 金融庁「FSA Analytical Notes(2026.7)vol.1」(同日公表・地域銀行の住宅ローンにおける気候関連リスク分析の試行)
https://www.fsa.go.jp/common/about/kaikaku/fsaanalyticalnotes/20260717/20260717.html