街路の再設計×提示方法の評価バイアス

2026-08-18

街路の再設計×提示方法の評価バイアス 図版1

街路の再設計案を、静止画で見せるか、動かせる360度の映像で見せるかで、評価に効く要素の重みが変わっていました。

8月13日にnpj Urban Sustainabilityで公開された、スイスの研究です。全国代表性のあるモビリティパネルに実験を埋め込み、5,991人が架空の街路の再設計案を評価しました。回答者は、幹線道路か生活道路か、静止画か360度か、の4つの組み合わせにランダムに割り当てられます。変えてあるのはインフラ、緑、人が過ごせる空間で、費用や財源のしくみも添えられています。見るのは、受け入れられるか、近くに住みたいか、その道を自転車で走りたいか、の3つです。

緑は、どちらの見せ方でも支持を高めていました。

差が出たのは、提示のしかたのほうです。360度で見せた条件では社会的な要素への感度が相対的に高まり、静止画で見せた条件では環境とインフラの要素への感度が相対的に高まった、と出版社版の要旨にあります。

面白いのはその裏側で、著者らが公開しているワーキングペーパー版には、360度で見せると緑の効果はむしろやや弱まった、と書かれていました。没入した環境では動きのある社会的なやりとりのほうに注意が向いて、静的な緑は目立ちにくくなるのではないか、というのが著者らの挙げる説明のひとつです。

ただし、この研究は視線を測っていません。測ったのは選択で、そこからどの要素が評価に効いたかを推定しています。「人がどこを見たか」ではなく、「どの要素が選択を左右したか」の話です。実際に整備された街路での行動でもなく、架空の案に対する回答でもあります。

それでも、住民説明や参加型の計画に持ち帰れるものはあると思います。提案の中身だけでなく、それを何で見せるかによって、評価で重みを持つ要素が変わり得る。少なくとも今回の実験は、その可能性を示していました。

なお、出版社版に「編集前の未校正版を早く読めるように公開したもので、記述や数値が最終版で変わり得る」と但し書きが付いています。上の「緑が弱まる」のほうは2025年5月のワーキングペーパー版が出どころとなります。

🔗 出版社版(オープンアクセス・未校正版): https://doi.org/10.1038/s42949-026-00463-5
🔗 ワーキングペーパー版(ETH Zurich・2025年5月・CC BY): https://doi.org/10.3929/ethz-b-000738485